タイポグラフィ・ハンドブック — 勘や感性でなく“理屈”で書体を学ぶことができるタイポグラフィ辞書

info過去に運営していたフォントブログの記事を再編集して公開をしています。

タイポグラフィ・ハンドブックは、スイス・タイポグラフィを熟知し、大学等で教鞭をとる小泉 均さんによる書籍です。小泉さんはグラフィックデザイナー・タイポグラファーとしてだけでなく、かつて「デザインの現場」にて連載を行なっていた「タイポグラフィの読み方(美術出版社)」の著者、「Helvetica Forever」の監修者としてもご活躍されていました。

本書は美術・デザイン系の出版社さんではなく、辞書を得意とする研究社さんの書籍であるため、コンパクトで辞書のような装丁となっています。何となく覚えてきた・学んできたタイポグラフィの知識を、しっかりと理屈にすることができるというコンセプトになっています。頭から読んでいくというよりは、調べたい部分を都度開くという、辞書のような使い方がぴったりです。

2021年には第2版として初版の半分以上の掲載内容を刷新し、和文フォントやWebフォントに関する情報が追加されています。

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今回、著者の小泉さんと直接やり取りしインタビューをすることができました。その中で気になったページのサンプルデータを頂くことができましたので紹介いたします。
※一部旧版のページとなっていますのでご了承ください。

冒頭ではUniversやHelveticaなどの代表的な欧文書体の“カーブ”から、書体デザインの違いを考察します。大きいサンプルで1つの文字をじっと見てみてください。どんなところがどんな風に違うのかがよく分かります。

書体の歴史や、その分類(ジャンル)についても具体例を交えながら分かりやすく解説されています。書体の分類については、音楽のジャンルと同じぐらい特別決まったものがあるわけではないそうですが、Vox-ATypIの分類法のほか、FontShopやLinotypeによる独自の分類法も紹介されています。

Centaur、Caslon、Didot、Bodoni、Gothamなど厳選された53書体の組見本が集められています。書体選びには様々な考え方がありますが、“一文字一文字をみて決定するのではなく、組んだ状態の黒みやテクスチャーで決定することが通常である” の一文に納得してしまいました。その理由はこの組見本を見比べてみるとよく分かります。

実際に書体を組む際に参考になるワードスペースやハイフネーション、グリッドシステムなど。サンプルが視覚的で非常に分かりやすいです。

フォントのファミリーといえば必ず挙がるUniversの考察。ウェイト展開において初めてナンバリングが導入された書体です。

書体やタイポグラフィの話題だけでなく、タイポグラフィの重要人物(Typogoers)、フォントファウンダリリスト、専門用語索引のほか、封筒やレターヘッド、カードなどについても取り上げているという充実っぷり。何から何まで網羅されています。

小泉さんとのやり取りの中で、“この本はデザイン書やタイポグラフィ・アート本ではない。” と仰っていました。いいところがぎゅっと凝縮され、かつ日本語で分かりやすく解説されたこれまでになかった辞書とのことです。学生の皆さんにはもちろん、プロの方にも本棚に並べておきたい一冊です。

タイポグラフィ・ハンドブック 第2版

2021年には第2版として初版の半分以上の掲載内容を刷新し、和文フォントやWebフォントに関する情報が追加されています。

初稿:2012.7.6